17.2.16

トライアンフ 水冷 ボンネビル ストリートツイン試乗!

 Hello there! 巷で話題の水冷化したトライアンフのニューボンネビルシリーズ。

 今回はこの新型、水冷ボンネビル・シリーズのストリートツインのインプレッションをクラシック・ブリティッシュバイク好きの目線よりお伝えします。


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Photo/Text Hiro 前田 宏行 (Rustless Production)

 まず空冷・DOHCエンジンのボンネビルと並んで展示されている姿を見て、そのコンパクト感に驚いた。実際に跨ってみると脚付きも良い。900ccという排気量で、乾燥重量は200kgを下回っている。これまでの空冷モデルと比べるとその軽さは明らかで、押し引きの感覚ではもっと軽いようにさえ思える。クラシック・トライアンフの真骨頂とも言える魅力の一つにその「軽さ」が挙げられるので、試乗への期待が一層高まった。

追記:重量についての以前の説明を修正・追記します。(2016年3月20日)
新型・ストリートツインの乾燥重量は198kg
新型・T120 水冷OHCボンネビルの乾燥重量は224kg
旧型・空冷DOHCモデルの乾燥重量は214kg
(空冷DOHCでも、キャストホイール仕様の乾燥重量は209kg)

オイルやガソリンを含む、装備重量(車両重量)と混同しやすいのでご注意を。

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 エンジンをスタートさせる。キルスイッチとスターターボタンが兼用となったことで知らぬ間にキルスイッチを触ってしまい、エンジンが掛からない!ということを防いでくれる。エキゾースト・ノートは、これでノーマルなのか、と思うほどに元気だ。決してうるさい訳ではないが、しっかりと主張する音量だ。エキゾーストパイプから、サイレンサーへの繋がりもスムース。空冷モデルのエキパイは、サイレンサーへのつながりが同一線上ではなかったが、こちらはとても潔い。エキパイがエンジン下部に差し掛かる辺りで触媒へと一度経路を変更し、また本来のラインへと接合される。そのエキパイの箇所にはカバーがあるが、特に気にはならなかった。今回の水冷化により、フレームのダブルクレードル部の中央にラジエーターが備えられた。華奢なイメージは若干損なわれたのかもしれないが、しかしその水冷化によって、クラシックトライアンフを想起させるエンジンフィンの造詣が可能となった恩恵の方が大きいように思う。


 クラッチは新たに装備されたアシストクラッチのおかげでまさにフェザーライト。引く感触はあるものの、そのタッチは本当に軽い。長距離や渋滞にはまった時のことを考えると、心強い。1速へと送り込む。「カツーン」としっかりとしたストローク感で、硬質なタッチが足に伝わる。クラッチの軽さとは逆の明確さがあって、そのギャップが一つの「味」とも捉えられるのかと思った。ワイヤーを必要としない、ライド・バイ・ワイヤも装備された。いつも強制開閉のキャブ車ばかり乗っているためだろう、キャブの中にあるスライドが開いていく感触とは異なるため、出だしのアクセル開度が掴みにくかったが、これは単純に慣れの問題。


 先だって試乗させていただいた、空冷モデルのスクランブラーも270度クランクを備えるが、この新型では低中速での躍動感とパワーが強調されている。今回OHCとなったことにより、ロッカーボックスがコンパクトに、そしてあえてパワーの盛り上がりを演出しているのだな、と感じた。ゆったりとした幹線道路で、勢い良くスロットルを開けてみる。体が置いて行かれる様な、クラっと来る程の激しい加速ではないが、十分に満たされる。それほど高回転まで回すことは出来なかったが、緩急の操作共に素直で、思った通りに反応してくれた。アイドリング時には排気音に混ざり、カチカチと刻むメカノイズにも親しみを覚えたが、これは好き嫌いが分かれるかもしれない。


 ホイールはフロントが18インチ、リアが17インチ。往年のタイヤが新型ボンネビルのために刷新され、装着されているそうだ。スクランブラーやT10019x17だ。スクランブラーは立ちがとても強く感じられ、カーブを曲がる際に意識が必要だった。この日、筆者が乗っていたカワサキ・W1SAのハンドリングと比べても、このスクランブラーの「立とうとする頑固さ」には驚いた。しかし、ストリートツインはとてもニュートラルだ。曲がりしなに、入り込もうとするわけでもなく、立とうとするわけでもない。ひとつ目の角を曲がった時から、すでに見知った相棒のような、そんな気にさせてくれた。

 「大型バイク」というボリューム感には欠けるので、どっしりと構える面では、空冷モデルに軍配が上がる。しかし、「大型なのにこんなに軽く、コンパクト」がクラシック・トライアンフと相通ずる、新型の最大の魅力だとやはり思う。空冷モデルのスクランブラーは、クラシックバイクで言うとノートン・コマンドー的な車格感、と言えばいいだろうか。ストリートツインは、上述したようにまさにユニットのトライアンフツインのサイズ感で、飄々と駆けるイメージ。ふと気になったので、ホイールベースを幾つかピックアップしてみた。空冷ボンネビルが、コマンドーやW800などよりも随分長いことに驚いた。やはり、ストリートツインは、クラシックトライアンフや、SRに近い数値だったことに納得。

ストリートツイン 1,415mm
空冷ボンネビル 1,500mm
1968年 トライアンフ ボンネビル 1,410mm
ヤマハ SR 1,410mm
1971年 ノートンコマンド 1,441mm
カワサキ W800 1,465mm
カワサキ W1SA 1,420mm



 信号待ちで、ふとスリムなタンクに目をやるとその左右からシリンダーヘッドの角張が視界に入る。そしてその先にはエキゾーストパイプ。この眺めが、まさにクラシックのトライアンフツインのそれと見事にオーバーラップした。クランクケースカバーのデザインもしかり。ユニットエンジンの、タイミングサイドの逆三角型のケース、プライマリー&クラッチサイドのケースのシェイプ。そのデザインソースが詳らかにされている。エンジン内部のデザインはどうなっているのだろう。当時のそれは、カムギアなどの配置により生まれたもので、何かを目指してつくられたものではない。別体のあの美しいタイミングカバーも、点火と発電を担うマグネトーとダイナモをタイミングギアの左右に配置するため、結果として生まれたシェイプだ。デザインの踏襲に重きをおいて、よくこの形に収まったものだなぁと感服。



 今回の試乗は20分強のもので、高速道路も使用していない。だから、長距離を共にするとまた違う面も見えるだろう。長旅をするには、1,200cc6速を備える水冷ボンネビルがかなり魅力的に映る。チョイ乗り、空いた下道、ワインディングが好みの方にはこのストリートツインが程良いように思える。個人的には、スポークホイールを纏うボンネビルよりも、こちらのキャストの方がより現代的で好みだ。

 試乗が終わりに近づいた頃、膝の内側が暖かいことに気付いた。エンジンの熱が、伝わってきているのだろう。これは今まで乗ってきたバーチカルツインで、あまり感じたことがない類のものに思われた。これは、この時の乗車位置や、しっかりとニーグリップをする癖のせいかもしれない・・・これは距離を走ってみないと分からないが、試乗後もしばらくはそこに感覚が残っていた。そのことをスタッフの方に伝えると、ニーグリップよりも、足首のグリップを意識すると良いのでは、というアドバイスをいただいた。



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 ロンドンのクラシックバイク乗りの友人には、現代のマシンも共に愛用している人々も多い。彼らは、クラシックバイクをもう何十年も乗り続けているので、クラシックバイクでのハードコアな旅はもう十分経験したのかもしれない。いい意味で、肩の力が抜けているのだ。クラシックと、モダンとの楽しみを上手に使い分けている。

 日本では、クラシック乗りはクラシックオンリー。現行のトラは、トラではない、というような乱暴な声も聞いたことがある。(それはW系などでも同じだろう。)でもその考え方は、他者を否定することで、自分の存在を肯定するようにも思え、バイクで味わえる「フリーダム」とはそもそもかけ離れているように思う。

 クラシックと現代のバイクは当たり前だが別物であり、それぞれの楽しみ方がある。じゃあ、両方楽しめたら、もっと楽しいよね?というメッセージを、このストリートツインは代弁してくれた気がして、とても嬉しかった。

 空冷モデルのボンネビルは、「なるほど、こう現代に生まれ変わったか」で、水冷モデルの新型ボンネビルは、「なるほど、こう熟成されたか」という切り口がしっくりくるように思う。筆者は、取材であちこちへ旅する際の相棒として、欲しいなぁと心が揺り動かされた。
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Special Thanks:
トライアンフ神戸

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